Oni no Hashi / little by little

前川ひな/Hina Maekawa《Oni no Hashi》2016, 65.2x50cm, oil and acrylic on canvas宮川慶子/Keiko Miyagawa《Someday》2016, real fur

2016/12/1(木)~2017/1/13(金) 11:00~18:00(土・日・祝 – 休廊) ※12/28(水)〜1/4(水)は年末年始のため休廊とさせていただきます。

オープニング・レセプション 12/1(木) 16:00~18:00

http://www.masataka-contemporary.com/mt329b1/
 
イメージとして表象化された古今の女性像、神話的モチーフを用い、油彩や樹脂による寓話的な絵画世界を追求する前川ひな。

「生」「聖」「性」の営みにまつわる矛盾について考えながら、剥製や毛皮、樹脂粘土で架空の動物のような作品を制作する宮川慶子。

作家らの生々しい感情を託した美しい作品群を、ぜひ多くの方々にご高覧いただきたく存じます。
 


 
◆前川ひな

1990 千葉県生まれ

2014 東京藝術大学美術学部デザイン科 卒業

2016 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程デザイン専攻 描画・装飾研究室 修了

現在  東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻デザイン研究領域 描画・装飾研究室 在学
 
女という表象にはたしていつから私は執着してきたのであろう。女として生まれ、母と確執があった。それだけではない。

けばけばしく愛くるしい玩具のような絵本は買わない母だった。私が与えられ読んでいた絵本は、古今の民話や軽妙な調べのわらべうただった。
 
穀物の在り処を導くアルビノの娘。

自身の体からトウモロコシを生み出す老婆。

変幻をしくじり、小指の欠けた女。

男を水に引き込む妖しの女。
 
私の童心には、まずその記号的表象そのものが色濃く残った。

穀類の実のような娘の白肌。トウモロコシになる皮膚。欠けた小指。水辺の竪琴。
 
そうして少し歳をとり、次に思いを馳せたのは、そんな女たちに賦与された役割だった。

彼女らは時に霊媒となり、聖と穢れ、サトとムラの境界を行き来し、その胎内に全てを呑み込んでしまう自己にとっての脅威であった。

民話、神話における女性、幼児、法師らはしばしば媒介者である。
 
民話を紡ぎ、始原に立ち戻る運動を人間の性は欲し続け、かつえた何かを癒してきたのであろう。

近代は失われ、大きな物語の終焉以後の時代と言われ久しい。かつて聖と穢れを行き来した乞食は単なる浮浪者となり、大都市からは真の祭礼が消えたかのようだ。

赤坂憲雄はかつて氏の著作でこう述べている。
 
“物語は差別の構造を下敷きにすることなしに、はたしてよく輝くか。人は差別なしによくカタルシスを得るか。”
 
言葉狩りに代表される現代の安全弁の下で、澱のように留まっている水屑がある。その水屑の何を葬り、何を選び次代の徴とするのか。

人と物語の持つ生の震えを見失わぬように、せめて私はその形象を拾い、縫いとめている。
 
【展示歴】

2016

個展「第50回新人選抜 レスポワール展/銀座スルガ台画廊

Masataka Contemporary’s Exhibition: Japanese Women Artists/Bernarducci Meisel Gallery, New York

O+展/新生堂

nine colors X/西武渋谷店

MITSUKOSHI×東京藝術大学/三越日本橋本店
 
2015

O+展/新生堂

nine colors IX/西武渋谷店
 
2014

アートのチカラ/伊勢丹新宿本館

芸大・茨大・筑波大卒業終了制作選抜展/東海ステーションギャラリーB(東海村)

nine colors VIII/西武渋谷店、西武池袋本店
 
2013

nine colors VII/西武渋谷店、西武池袋本店

他多数
 
【受賞歴】

シェル美術賞2016 入選

Next Art展2015 入選

WONDER SEEDS 2013 入選
 


 
◆宮川慶子

1991 神奈川県生まれ

2014 東京造形大学 造形学部 造形学科 絵画専攻領域 卒業

2016 東京造形大学大学院 造形研究科 美術研究領域 修了
 
Why you’re really here? Why am I really here?
 
なぜ、あなたはここにいるのだろう?

と聞かれたことがある。
 
それからいつも、なぜここにわたしは存在しているのか思うようになった。

なぜ、あなたやわたしは今ここにいるのでしょうか。
 
あなたが草原を歩いているとき、

わたしは草原を思いながら、アスファルトを歩く。

あなたが山を見て草花を摘んでいるとき

わたしはプラスチックの容器でお茶を飲み、

窓からビルをぼんやり眺める。
 
あなたが草原で摘んで持って帰ってきた草花たちの押し花からは、かすかにまだ草原の匂いがする。

どんな場所だったのだろう。

匂いをかぎ、まだ知らないその土地について想いを馳せる。

いつか誰もが草原の一部となるときがやってくるその時、

何について想いを馳せているのだろうか。
 
外から歩く人の笑い声や話し声がかすかに聞こえる。

子供の足音も聞こえる。生きている音が聞こえる中で、

生きているわたしやあなたは寝息や体温を感じて心地よく眠る。
 
【展示歴】

2016

個展「Close yet far」/galerieH

MONSTER Exhibition 2016/渋谷ヒカリエ 8/COURT

ART FAIR ASIA FUKUOKA 2016/福岡ホテルオークラ

東京五美術大学連合卒業修了作品展/国立新美術館
 
2015

個展「Paresthesia」/galerieH

ペコちゃん展/平塚市美術館
 
2014

個展「As I pray for you and me」/青森県立美術館

個展「As I walk inside you」/galerieH

うつろいつつうらうら/アートラボはしもと

掘りごたつハリケーン/The Artcomplex Center of Tokyo
 
2013

銀座彫刻博覧会 エストネーション銀座店開店5周年記念展覧会/エストネーション銀座店

池田満寿夫 入江明日香 井田大介 宮川慶子 5人展/番町画廊

他多数
 
【受賞歴】

MONSTER Exhibition 2016 最優秀賞

奈良美智が選ぶ若手作家 PHASE2014 選抜